2021 福山大学要覧
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2021Fukuyama univ.広島県は山を切り開いた住宅地が多く、豪雨などによる土砂災害の予測・防止策が急がれています。福山大学では「土砂崩れ予測システムの研究」として、土砂崩れを予知する技術開発を推進しています。新木さんが学部3年次から現在の大学院まで熱心に取り組んでいるのが、山斜面の情報を収集するための光リンクセンサーネットワークの構築で、この研究に取り組むきっかけは、思わぬ偶然だったそうです。「配属が決まった香川教授の研究室に置いてあった走行体をたまたま見つけました。これは何だろうと調べたところ、土砂災害防止システムで使用する3輪型のオムニホイールロボットであることがわかり、まずはこの走行体の復活に取り組んでみたのです」。タイヤの回転速度を制御する装置を作成した新木さんは、この取り掛かりから土砂崩れ防止に関わる研究の意義を感じたそうです。土砂崩れ予測システム自身の専門研究として選んだこの分野は、山林の中などで大気ガス濃度を測定するための可動型の送受信光学です。3年次では通信に使用するレーザ光の軸を自動で追尾できる全方向移動用の走行体の設計に取り組み、4年次からはビームの領域を抽出するためのアルゴリズムの改良に着手しました。「レーザの入射角度によって取り込める画像の精度が変わるため、真ん中を軸に回転する走行体に沿って追尾し、最も適切な像を映せる垂直の角度に速やかに修正できるよう改良を加えていきました」と新木さんは話します。このような緻密な研究は、進めるごとに新たな課題にぶつかり、その課題を解決していくという繰り返しでした。そのため「忍耐力と問題解決能力が身についたと感じます。いつも100%の答えは出ませんが、何らかの糸口から解決に近づけて一つずつ進めていく粘り強さが身についた」のだそうです。難関を乗り越えてきたそのモチベーションは、土砂崩れ予測システムという世の中に役立つ技術の一端を担っているという誇りと使命感だと新木さんは胸を張ります。他にも、地上移動のセンシングと海洋データの収集を統合した防災システムをめざす。工学部の学びはP072へどんな難関も粘り強く超えていく。そのモチベーションは世の中のためになるという信念。大規模災害の現場では通信インフラが失われた中で被害者の捜索が行われるため、通信と計測を可能にする光リンク機構を用いたネットワークの構築によって速やかに救援できるシステム開発をめざしている。014未来にふれる学生たちの日々偶然見つけた走行体への興味が、土砂崩れ予測システムの一端を担う研究のはじまり。山と住宅地が近い広島は土砂崩れ対策が急務。災害現場の情報を収集するための送受信光学の精度向上に挑戦。02

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